縦横無尽

金曜日。顧客とのセッションは割と上出来だった。まぁ、また来週のセッションのために資料の作り込みと動作確認を繰り返さなきゃならないが、とりあえずはひと段落お疲れ様ということで、発泡酒で一人晩酌をしていた。

程よく酔いが回ってきた頃、LINEの着信が。撮影会バイトの件だった。

え！？やっぱやるの、この時節に？まぁ、社長も女の子も、それで飯食ってんだから、金回せるうちは回した方が世のためか。３連休の真ん中が潰れるのはちょっと凹むが、小遣いもらうつもりで頑張りますか。

と、思いながらLINE開いたら、

「直前のお願いになって大変申し訳ないのですが、９日（土）7:30に浅草集合は可能でしょうか？」と書いてあった。

は！！！？？？

明日？？？浅草！？７時！？？？

和光市から浅草って１時間かかるし、ましてや行ったこともないレンタル着物屋集合なら、どう考えても６時には電車乗らないと余裕持って行動できないだろ。もうアルコール入っちゃってるんですが俺。

依頼された内容はこう。

AM7:30までに、コンビニで３名分の軽食を買い、浅草のレンタル着物屋(モデルが振袖の着付けを行う)で入りのモデルさんに渡す。その後、お台場の海浜公園事務所に移動し、当日の撮影申請を行う。そして10:00から海浜公園で野外撮影のマネジメント。さらに14:00までに千駄ヶ谷のスタジオに移動しさらに撮影運営の後、解散。

縦横無尽かよ。

時給1,100円のバイトってこんなことさせられるのか・・・せめて家を出た時間から給与発生させてほしいくらいだが、まぁ、前日にこんなこと頼んでくるんだからよっぽど切羽詰まっているんだろうて、義を見て為さざるは侠に非ずということで、結局５時起きになった土曜日。

まだ暗い浅草に着き、サンドイッチとおにぎりとお茶を買い、５分遅れでやってきたモデル達に渡す。そしたら着付け屋のおばさんが「今日１時間仕上げなんだからご飯食べてる暇なんてないわよ！」と何故か俺にキレ出す。

知らねーよ！！俺に言うな！！

とりあえずハイハイすみませんでしたと謝罪し（何の？）、今度はゆりかもめに乗るため一旦新橋へ。前職に勤めていた頃以来の新橋だが、あまり懐かしむ間もなくお台場へ。そこで別の運営スタッフから連絡が。

「言い忘れてたんですが、撮影申請の時、申請料立て替えてもらう必要あるんですが大丈夫ですか？」

言い忘れるなよ！！！まだ月初だから奇跡的に大丈夫だが、給料日前に俺の財布に万札入ってるなんて思うなよ！？

どうにかスムーズに事務所の場所は判明したので、当日と翌日分の申請を済ませ、撮影料金計4,800円を支払う。朝のモデルさんの軽食分も払ってるし、なんでバイトの最中にどんどん財布の中身が無くなっていくんだ・・・。

申請済ませたら、今度は撮影会場に移動。参加者受付と、実際の撮影のタイムマネジメント。まぁ、今回はモデルさんが３名だけなので、そんなにきつくはなかった。依然として人の顔と名前を覚えるのが苦手な俺だが、この日の３名はそれぞれ髪の色が黒、茶、銀と、アニメ張りの親切設計だったので比較的楽ちん。

午前で２部回し、午後は千駄ヶ谷のスタジオへ移動。本来ならモデルさんと一緒に車で移動だったのだが、「荷物がいっぱい」と言う理由で俺だけ電車移動になった。ええ、まぁ予想はしてましたけども。

台場から汐留、そこから国立競技場へ。いつも、拘束時間から昼休憩の１時間が引かれたのが実動として時給換算されるんだが、この日は移動しながらパン食っただけなんだよね。釈然とせん。

午後も同じように撮影回して何とか終了。移動が慌ただしかったが、撮影自体に特にトラブルが無くてよかった・・・。まぁ、けっこう格式のあるショークラブ所属のモデルさんだったんで、比較的テキパキ動いてくれるのは助かる。例えば控室をノックして「ご準備お願いします！」と声をかけてから、実際に出てくるまでのタイムラグは、だいたい所属の事務所の質で分かれたりするからな。

ところで、毎回、１人くらいは女性のカメラマンさんが参加してくる。まぁ、カメラ趣味の女性は多いし、女の子を撮るのが好きな人がいてもおかしいことじゃないが、これまで俺は「もしかして百合っ気がある人なのかな？」と、勝手に偏見に満ちた推理をしていた。

しかし、今回の方はなんと夫婦で参加。え、旦那さんいるの！？と言うことはまぁ、恋愛対象はあくまで男性なんだろうな。単純に可愛い女の子を見るのが好きってことか。AKBとかハロプロオタの女の子も結構いるしな。いやしかし、それはそれとして、旦那さんが自分以外の女の子の水着写真とかパシャパシャ撮ってるのは、妻としてOKなのか・・・？よくわからん・・・。しかも今回のモデルはショークラブ所属だし、顔馴染みってことはお店にも夫婦で行ってたりするんだろうか。まぁ、別にクラブも撮影会もいかがわしいことしてるわけじゃないからね。それが共通の趣味ならそれはそれで幸せなことか。

というわけで、とりあえず疲れた。別に嫌な仕事ではないが、このまま人材難が続くと、求められる内容が多くなりそうで嫌な予感がし始めている。あくまで俺の認識は臨時ヘルパーだからな。まぁ繁忙期の１月中くらいは様子を見るにしても、たまには断ることも考えた方がいいかもしれないな・・・