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ちょきちょき

日曜は髪を切りに行ってきた。和光に引っ越してきてから4回目ぐらいの美容室。いつも通り予約して行ったのだが、今回担当してくれたのはお姉さんだった。お姉さん、と言っても多分年下だったりするんだろうけど。

うーむ、毎回切ってくれてるあのお兄さんは休みだったか・・・。何となく女性に切られるのって落ち着かないし、前回のスタイルを知っててくれてる人の方が色々と都合が良いのだが・・・。まぁ、仕方ないか。お姉さんもプロだし、前回のカット日から逆算しておおよそどんな髪型してたかは想像できるんだろうて。

カットし始めてすぐ、隣の席に若い女性客が来た。そっちに着いたヘアリストさんは、初めてみるチャラ男系のスタイリストだった。え、男のスタッフもいるんじゃん!男性客に男性スタイリストを着けるってことでもないのか・・・。女性客の口ぶりからして、指名したわけでもなさそうだし。男は切らない主義とか?芋っぽい男は専門外?なんとなく釈然としないが、まぁ別に今切ってくれてるお姉さんに不満があるわけじゃあないので・・・。

それにしても、隣の女性客とスタイリストは、休日の過ごし方の話題とかでものすごく会話が盛り上がっている。盛り上がっているというか、スタイリストの方がグイグイ押しているというか、話し方のトーンは歌舞伎町の路上でよく見かける方々のそれに近いが。

一方で俺とお姉さんの静けさたるや。黙々、ちょきちょき、黙々、ちょきちょき。勝手なイメージ、どちらかといえばお姉さんも寡黙というより元気っ娘系の見た目してるんだが。全然喋ってくれない・・・。今にもドンペリ入れて乾杯しそうな隣の雰囲気に対比されて、こっちは献杯でもするくらい空気が重い。なんだこれは、俺が悪いのか!?でも俺から話題振るのもなんか違うし!

そのまましばらく黙々切り続けていたお姉さんが、ふと尋ねてきた。

「あのー、前回って後頭部は長めに残したりしました・・・?」

え?

やっと話しかけてくれたと思ったら、言ってる意味がちょっとわかんねえ。基本的に下を刈り上げて、頭頂の方もバランス良く整えてもらったぐらいで、少なくとも特別な注文はしていない。

「前に切ったの2ヶ月前ですよね?」

そう言ってお姉さんは(計算が合わねえ・・・)みたいな顔をし始める。恐る恐る、「ボリューム出過ぎてますかね?」と聞いてみたら、

やべっス!」

と言われた。やっぱやベーのか。

「量が多いし・・・1本1本強くてまっすぐだし・・・」

暑そうっス!」

とだけ言い残し、またお姉さんは黙々切り始めた。そっスか・・・。

まぁ、なんだかんだで仕上がりは上々だった。

隣の女性客もちょうど同じぐらいのタイミングで終わり、向こうが先に会計だった。例のチャラ男スタイリストは「お客さんに渡したいものがあるんです!」と言いながら、女性に名刺と割引券のようなものを差し出し、「これ、次回僕を指名してくれたら使えるクーポンなんです!僕、土日はどっちか休みになっちゃうんですけど、タイミングが合えばまたお客さんの担当させて頂きたいです!僕、◯◯って言います!よろしくお願いします!」と、懇切丁寧にお見送りしていた。ふーん、そういうクーポンもあるのか。俺も札幌のすすきのでそういうの貰ったことあるぞ。

で、俺の会計はカットしてくれたお姉さんがしてくれたんだが、

「ありがとうございました!またお願いしまっス!」

と元気な挨拶で普通に見送られた。あ、あれ・・・?

お姉さんのクーポンは・・・?ねえ?

まぁ実際のところ、俺は普段切ってくれてるお兄さんの名刺を既に貰っているので、今回のお姉さんはキャバクラやホストクラブでいえばヘルプみたいな立ち位置だったんだろう。その世界じゃ、ヘルプが名刺渡したり営業をかけるのはご法度だ。「仁義を欠いちゃいられやしないよ」ってやつだな。だからと言って客の髪のボリュームを「やべっス」で表現するのが正しいのかは知らんが。

それにしても、いつものお兄さんからクーポンは貰ったことないぞ。どう言うことだ、まったく・・・

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